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「勉強は1人でするものだと思っていた」。文系エリートをエンジニアへ転向させた42東京のコミュニティラーニング

文系大学4年の冬。国家公務員の試験に合格していながら、42東京の入学試験Piscineに挑んだ須藤理央さん。Piscine合格後は公務員としての就職機会を棄て、42東京への入学を選択します。 
プログラミング未経験で入学してから一年半、42東京の課題にフルコミットしてきた生活はどのようなものだったのか。42東京の課題を通じて、須藤さんのエンジニア像がどのように形成されていったのか。
汗臭い努力を人には見せない飄々とした語り口ではありますが、その中に須藤さんの確かなエンジニアスピリットを感じるインタビューとなりました。

教室での勉強が嫌いだったが、決して不得意ではなかった。

ー現在24歳ということですが、まず、これまでの経緯を聞いていきたいと思います。ちなみにどんな中高生でした?

須藤理央さん(以下:須藤):教室でやる勉強は嫌いだったんですが、でも不得意というわけではなかったのと、人と競争するのも好きだったので、授業は適当に受けて密かに自習してクリアしていく感じでした。スポーツは中高大と今でも続けているんですが、バドミントンをやってます。実は明後日試合があったりします(笑)。

ーなぜ教室での勉強が好きじゃなかったんでしょうか?

須藤:自分のペースでやりたいなっていうのはありましたね。何時間も先生の話を聞いてやるよりも、要点を整理して自分のやり方ならもっと効率的にできるはずだと思っていました。

ー好きな科目とかはありましたか?

須藤:勉強が苦ではなかったのは英語くらいですかね。

ーその後どのような進路へ進まれたのでしょう?

須藤:4年制大学の法学部法学科へ進みました。

ーなぜ法学部を受験したのですか?

須藤:特に法律を学ぶことに強いモチベーションがあったわけではなくて、私立の文系に絞っていくつか受けたうちの一つでした。

ー大学時代はエンジニアの仕事については興味はあったのでしょうか?また、エンジニアの仕事についてはどのような印象がありましたか?

須藤:周りにエンジニアを目指してる人はいなくて、特に興味もなかったので、イメージだけで「いっつも勉強してて大変そうだなー」くらいに思ってました。

ーその時点では今の自分は全く想像できない感じだったんですね。就職についてはどのように考えていましたか?

須藤:在学中は「仕事はなんでもいい」というモチベーションでした。僕の父が公務員なのもあり、選択肢として公務員は身近にありました。試験に通れば就職できるというのもわかりやすかったですね。地方公務員試験と国家公務員試験の両方を受けて、国家公務員試験の方だけ合格した感じです。

ー公務員試験もかなり大変な勉強だったとは思いますが、そこも持ち前の自習力で勝負したんですか?

須藤:そうですね(笑)。一人で図書館にこもったりして、結構集中して取り組みました。

ーどのような国家公務員の職に内定が決まったのでしょうか?

須藤:国税専門官という税務署などで働いている公務員です。

ーそこから42の世界にくるというのもかなり異色だと思います。ちょっと深掘りして聞いてみたいところですね。

「仕事に依存しない働き方」という選択肢を残しておきたかった

ー国家公務員という仕事を蹴った理由はなんだったのでしょう?

須藤:進路が決まったっていう安心感はありましたが、国家公務員ってかなり仕事に依存している印象があって。仕事はなくなるということはないにしても、何かがあって辞めたいとか、別の仕事をしたいとなった際に、潰しが効かな過ぎて再就職が大変そうだなという不安があったんです。なのでもっと自由に動ける選択肢を残しておきたいと考えました。

ー42東京はどういうきっかけで知ったのでしょう?

須藤:固定された仕事に依存しない働き方という部分で、改めてエンジニアに興味を持って、色々調べているうちにネットで知りました。

ー42東京のどんなところが自分とマッチングしたのだと思いますか?

須藤:先ほど話した通り、元々机に座って先生の話を聞くというスタイルの勉強がどうも苦手で、そうじゃないやり方で学べるというのがいいなと思いました。その点42東京には教師がいないし、変わった学校だなと思って、親を説得して決めました。

ー入学試験のPiscineはどうでしたか?

須藤:Piscineの1日目はこれまでの人生で一番きつかったですね。出てくる単語全てわからなかったです(笑)

ーどのような部分が大変でしたか?

須藤:一番最初が本当にきつくて、課題がどこにあるのかすらも、提出の仕方もわからずで。「誰かに聞かないと始まらない」というのが、自分にとってはハードル高かったですね。でも聞かなくては絶対先に進めない。

ーこれまで誰かと勉強するっていうことはあったんですか?

須藤:ほとんどなくて、先生にも一度も質問したことがないってほど一人で勉強をやってきたんです(笑)。僕はコロナ禍だったのでオンラインでの参加で、Discordで「強そうな人に聴く」ってところから始めました。

ーそれまでDiscordなどのチャットツールでの共同作業はしたことがあったのですか?

須藤:いえ、完全に初めてでした。42東京のためにDiscordのアプリを入れた感じです。

ーちなみにPiscineに合格した時はどんな気持ちでしたか?

須藤:とにかく大学も卒業しちゃった後で退路を絶って挑んでいたので、一安心って感じですかね。

ーその後、フルコミットで課題に取り組んでいたと思うんですが、普段はどんな1日を過ごしていたのでしょう?これは意外と知りたい人もいるかもしれません。

普段の生活。下は予定のある日のパターン

ー予定がある時以外はずっと課題をやってるという感じなんですね。

須藤:そうですね。入って一年くらいはとにかくずっとやってました。朝はとても頭の回転がいいので、早く起きて取り掛かって、夕方ごろ少し休んで、散歩したり、YouTubeなどを見て過ごして、夜からまた集中して。

ーもうすでにエンジニアのような自律した生活を(笑)

須藤:そうなんですかね(笑)

ー「エンジニアはいつもなんか勉強してて大変そう」と思っていたと言っていましたが、自分がプログラミングを勉強する身になってみて感じたことはありますか?

須藤:やってみると意外と苦を感じなくて、楽しいなという感じがありました。仲間とコミュニケーションをとりながら学んでいくというところも結構大きかったなと思います。

ー仲間との学習は効率的だったということですか?

須藤:なんというか、効率的というよりも、「広さ」があるなと思っています。例えば自分が全くつまづかないような場所で困ってる人を見つけて一緒に解決をしていると、一人では見えていなかったものが見えたり、今まで知らなかったことが知れたり、というような。それも楽しかったです。

ーエンジニアになりたいという気持ちも湧き上がってきましたか?

須藤:元々大学卒業して42東京にきたので、このままエンジニアになれたらいいなって気持ちではいたんですが、最初はプログラミングで何ができるかもわかっていなかったので、課題だけにひたすら集中という感じでしたね。

ー課題の中でも面白かったものや、強く興味を持った分野などはありますか?

須藤:それぞれ別の面白さがありましたが、僕は2Dのゲームを作るっていう課題がとても面白かったです。

ープログラミングを学ぶ上で、文系にはなかなか辛い理系の概念も多く出てくると思うんです。例えば「サインコサイン」などですかね。そうした際はやはり遡って学び直すケースも出てくると思うんですが、いかがでしたか?

須藤:そうですね。3Dの設計の課題の時に出てきて高校ぶりに勉強し直しました(笑)

ーそういう時はやっぱりしんどいものですか?

須藤:いや、それがそうでもなくて、目的のために学んでるので、全く苦じゃないんですよね。不思議なものですね。あんなに勉強を嫌ってたのに(笑)

ー確かに(笑)。自分はエンジニアに向いているっていう気持ちはありますか?

須藤:自分で向いてると考えたことはないんですが、学ぶのが苦じゃないっていう時点で、結構向いてるのかもとは思いますね。苦にならない学びの連続が仕事になるというのは面白いです。

エンジニアという職業の多様性を知ったサマーインターン。評価された「教えられ力」

ーこの夏、3週間のサマーインターンに参加したそうですが、いかがでしたか?

須藤:これまで42東京での学習は、言語化された課題があってそれをクリアしていくというものでしたが、インターンでは初めて、課題自体を考えて、提案、作成、提出するという仕事を体験しました。また、初めてブラウザ上で動くものを作ることができて、それはすごく面白かったですね。

ー具体的にどのようなプロジェクトに取り組んだのでしょう?

須藤:「価値あるWEBサービスを考える」というざっくりしたものでした。自分は0を1にするタイプの提案はそんなに多く出さなかったんですが、チームメンバーの提案を膨らませて良いものに増幅するというところはやれた感じがありました。「課題を考えて提案する」という部分にもエンジニアとしての仕事があるということを知ることができたような気がします。

ーチームではどのようなサービスを提案、作成したのですか?

須藤:人数や場所などを打ち込むことで、いろいろなスポーツを検索できるサイトを作りました。メジャーなものから知られていないマイナースポーツなど、こんなのもあるんだっていうのがわかるようなサイトです。閲覧者が情報を入れることもできるようにしました。

ーインターン先からはどのようなフィードバックがありましたか?

須藤:長文のフィードバックが返ってきました(笑)

ーそれは嬉しいですね。どのような内容でしたか?

須藤:教えられたことを反映する時などの「素直さ」を評価する内容でした。質問をしっかりできるところなど評価されました。質問力と素直さが相まって、教える方も教えがいがあるというか、「教えられ力」的な部分が書かれていましたね。

ー42東京での学習方法もさることながら、須藤さんがもともと持っている順応力、そして文系の学習で培われた読解力というものが効いているのかも知れないですね。

須藤:自分ではわからないですが(笑)

ーここからは須藤さんがサマーインターンを通して学んだことを含め、ここからは目指すべきエンジニア像に迫ってみたいです。

どの選択肢でも選べるように、できるだけ多くの知識を身につけておく

ーサマーインターンを通して「なりたいエンジニア像」は見えてきたりしましたか?。

須藤:まだそこまではっきりとしたわけではないんですが、エンジニアと一言で言っても色々なレイヤーの仕事があることを知りました。何か一つの種類に特化するというより、果たすべき成果や目標の為に、いろいろな角度から課題解決の提案や実装ができるエンジニアになりたいなという気持ちが湧いてきました。

ー須藤さんにとっては「多様な選択肢」というものがキーワードになっていると思いますが、その根底にはどんなマインドがあるのでしょうか。

須藤:そうですね...。進路にしても、一つの業務にしても、何かをやりたいと思い立った時に、どの方向にでも動ける自分でいたいというのが常にありますね。実際はやるとなればなんでもやると思うし、「辛いー!」となることもそんなにないのかなと思うんですが、心持ちとして、さまざまな選択肢が常に広がっていくように動いておいて、いつでも選べる状態でありたいと思っています。

ーエンジニアになるとしても、専門的なエンジニアではなく、オールラウンドのエンジニアを目指している、ということですか?

須藤:そうですね。インターンを通じて、エンジニアならそういう動きができるのかもという発見がありました。何か一つに特化したプロフェッショナルになるというイメージが今はなくても、エンジニアとして多くの知識を身につけ、できることを増やしていくような働き方をしていれば、その中で強く惹かれるものや、適正度合いの高い分野を見つけたらそれに集中することもできて。それは自分に合っていてきっと面白いと思ってます。

ーなるほど。須藤さんに取っての「選択肢」というのは決して逃げ場が欲しいわけではなくて、いつでも最適解に向かって舵をきれる状況に身を置きたいということなんですね。

須藤:そうですね。そういうことかなと思います。

ーところで、なぜその企業をインターン先に選んだのでしょうか。

須藤:WEB開発に興味があって、ちょうど短期インターンの募集を見つけて、応募しました。

ーそのまま就職という流れになるのでしょうか?

須藤:選考スキップという優遇があります。6次選考まであるフローが、いくつか免除されて、3次選考になります。今度、サマーインターンの事後面談があるので、エントリーの意志は伝えてみようと思います。

ー社会に出ると、学習とは違う様々な試練がさらにあると思うんですが、理不尽なことや、理屈が通らない時はどうしますか?法学部で学んだ法律知識が有効になったりするんでしょうか?(笑)

須藤:そんな法律キャラじゃないです(笑)
ただ頼まれると断れない性格なのもあるので、いくつもストックしてある対処法の中から、適宜対応していくんでしょうね(笑)

インタビューから数日後、サマーインターンの企業から内定をいただいたという報告がありました。

須藤 理央(Sudo Rio)
父親の職業として身近な選択肢だった公務員を目指し、4年生大学の法学部に入学。独自の自習スタイルで国家公務員の国家試験に合格。就職活動を終えたあと、42Tokyoと出会う。2021年2月Piscine受験、国家公務員の就職を蹴り、2022年4月から42 Tokyoに入学。フルコミットで42 Tokyoの課題に取り組み、読書会やチーム課題など、一人ではない学習体験を経る。
2022年夏、WEB開発企業のサマーインターンに参加。2023年、同社でエンジニアとしてのキャリアをスタートさせる。
趣味は、中学から続けてきたバドミントン。
Twitter:https://twitter.com/sudo0004
はてなブログ:https://rio-1.hatenablog.com/


現在、42東京では入学者を募集しています。16歳以上の方であれば、経歴や経験に関係なく誰でも応募することが可能です。ぜひお気軽にご応募ください。

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インタビュー・執筆 中野陽介

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