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数学と情報工学のあいだ。数学のスペシャリストが42東京で得た学びとAIへの探求心

藤本悠太さんは、幼いころに算数に魅了され、現在、数学科の大学へと進学。大学の授業でプログラミングに興味を抱いたことをきっかけに、42東京に入学して1年が経ちます。そんな中で見えた新しい目標と今後のキャリア。そんな藤本さんに数学についての魅力、プログラミングとの関連性、または相違点、そして新たに見つけたAI分野への興味について話を聞きました。

発想の転換で解を導き出す過程も魅力的

ー藤本さんは大学で数学科を専攻しています。すばり、算数・数学の魅力はなんでしょうか?

藤本:自分が数学を良いと思うところは2つあります。まずは計算をしていれば解ける、覚える必要がないところ。もう一つは解き方がツールとして使えるところですね。解き方を覚えていくことで自分が使える武器が増えていく。さらに効率の良い解き方を求めていく過程が楽しいです。

ー好きになったきっかけはありますか?

藤本:小学校の頃まで遡るんですが、友達に誘われて塾に行ったことがきっかけですね。中学受験の勉強で算数に魅了されました。

ーどんな部分に魅力を感じたんでしょうか?

藤本:平面図系の面積を求める応用問題で、その解き方がとても美しかったのが印象に残っています。

ー実際、その問題を覚えていますか?

藤本:覚えていますね(実際に問題と解を紙に書いてもらう)。
中学校・高校だったら方程式を使えば解ける問題なのですが、小学校なので方程式は使えない。という縛りがあるなかで、発想の転換で答えを導き出すのがすごく魅力的だと思いました。

小学校の時に出会った平面図系の面積を求める応用問題

数学とプログラミング、その相違点と共通点

ープログラミングは数字が得意な人が強いと勝手なイメージを描いていたのですが、そんなこともないのでしょうか?

藤本:関係ないと思います。僕自身、プログラミングを学んでいる人で文系・理系問わず僕がすごいなと思う人はたくさんいるので。

ーその上で、数学とプログラミングに共通点はあると思いますか?

藤本:どういうデータ構造を使えば問題が解決できるか、という点は共通していると思います。

ー逆に相違点はどこでしょうか?

藤本:数学の場合は、証明が必要ということですね。解について説明しなければいけない。プログラミングは結果を基に分析していく。プログラミングとサイエンスの違いと言えばいいでしょうか。

ー藤本さんが大学に通いながらも勉強したいと思った理由はなんでしょうか?

藤本:大学でもプログラミングの授業で学んだことがあって、時間をかけて勉強したいと思いました。シンプルに、やっていて面白いというのが大きいですね。

ー42東京を知ったきっかけは?

藤本:大学2年生のときに情報系の企業にインターンしているとき、友達が42東京を受けると言っていて、興味を持ったことがきっかけです。情報工学について基礎から学べると聞いて、勉強したいなと思いました。本来は大学で4年間かけて学ぶような内容なんです。それが無料で学べるというのは大きかったですね。

大学と42東京「学べるうちに学んでおきたい」

ー入学試験のPiscine(ピシン)はいかがでしたか?

藤本:最初は何をしたらいいか分からなくて困惑しましたが、人に聞きながら乗り越えました。バックグラウンドが違う人と接点を持てるのも楽しかったです。アメリカ出身の人だったり、機械工学を専攻している人がいたり、大学では出会えない人と、同じ課題をクリアしていくのは新鮮でした。

ー藤本さんは42東京に入学してから1年。大学とともに順調に学習を進めているとお聞きしています。その秘訣はなんでしょうか?

藤本:自分は時間があることがいちばん大きいんじゃないかと思っています。実験があるような学部だとより時間をかけなきゃいけないので大変だと思いますが、理数系の学部だとやることやっていれば、比較的時間を作りやすいと言えるのではないでしょうか。

ー具体的に42東京で藤本さんが楽しいと思っているのはどんな内容でしょうか?

藤本:グラフィックスの課題が楽しいと思いました。3次元の立体、陰影をコンピューターで計算して表現する、いわゆるレイトレーシングというものです。光源からの光の量、方向を把握し、光の屈折や反射など様々な影響を計算して作っていくのですが、最初は想像していなかったものが出来ていくというのが創造的で楽しかったです。

「確率」と「AI」、社会に貢献するものを創造したい

ー藤本さんはAIにも興味があるそうですね?

藤本:今、僕は大学で「確率」について専攻しています。過去にCoursera(コーセラ:世界の有名大学と企業が出資・運営する非営利団体。コンピューターサイエンスに関する学習をオンラインで提供する)のプログラムを受けたときに、AIと確率は大きく関わっていることを知って、興味を持ちました。大学院の研究分野を決める段階なのですが、AIに関連する分野に進もうと考えています。

ーAIでどんなことを実現したいですか?

藤本:今考えているのはAIの研究開発です。これはチャレンジングな目標ではあるんですけど、さっきのグラフィックスとの繋がりで画像処理、セキュリティに関するAIを開発できたらと思っています。

ー藤本さんが開発したいAIというのは、どんなもので社会のどんな場面で使われるものを想定していますか?

藤本:最近の例でいうと、見守りシステムですかね。子供やペットを認識して保護者や飼い主が安心できるような。あとは、モデレーター的なAIですね。

ーモデレーターというのは?

藤本:例えば、違法な動画をコンピューターが判別して自動で削除してくれるようなもの。人間だと感情が入ってしまうのと、メンタルヘルス的にも良くないと思うんです。そういう仕事を人間がやらなくて済むようになれば良いですね。

ーなるほど。実際に、そういった仕事があるみたいですけど、心を病んでしまう人は多いと聞いたことがあります。

藤本:あとは、筋肉の動きや感覚だったり、どう説明したらいいかわからないものを、機械学習で紐解けるようなものがあれば楽しいと思っています。上手なボールの蹴り方とか、遠くまで飛ばす方法とか。

ー藤本さんは大学と42東京で学びを深めつつ、大学院にも進まれるとのことですが、夢や目標はありますか?

藤本:「これは俺が作った」と言えるようなものを作り、それを通じて、企業や社会に貢献できればいいなと思っています。

ー42東京での学びで、AIに流用できることは何かありますか?

藤本:コードを書かないと動かないので、データ領域を扱う上では必要だと思っています。AIに興味を持ったのも42東京で学んでいる中で、AIが社会から必要とされているというのを実感できたからです。問題を解決するために必要という意味で言えば、数学の公式、方程式に通じているのかもしれません。

今までで一番難解だったものとは? 42東京を数式で表現

ーちなみに42東京に入学していなかったら、どんなだったか想像できますか?

藤本:僕、もともとアメフトやっていたんですけど、42東京に入らなかったらアメフトを4年間やっていたんだろうなと思いますね。今言ったようなキャリアプランニングは42東京に入ってから出来てきたので、アメフトやっていたら全然違う方向に進んでいたんじゃないでしょうか。

ーそういった経緯を踏まえ、42東京に入ってよかったことはなんですか?

藤本:プログラミングは専門じゃなかったので、より深く自分が学びたいことが学べるということと、大学だと学科の中では同じような考え方、バックボーンの方が比較的多いので、全然違う人たちと接することができたのは良かったと思いますね。

ー色んな世代、経歴の人と関わるというのは藤本さんにとっても必要なことだったと。

藤本:自分がどうなっていくかまだ迷っている中で、他の人の生き方は参考になるし、先輩たちに聞くこともできる。そういった環境は、自分のキャリアを考える上ですごく重要だと思いました。

ー算数、数学、プログラミング、全て含めて藤本さんが人生の中でいちばん難しかった問題はなんでしょうか?

藤本:それで言うと、やはりPiscineの1日目ですね(笑)。システムも問題も何を言われているかさっぱり分からない。冗談抜きで一番キツかったです。聞くのはもちろんですけど、めちゃくちゃググりました。

ーそんな42東京を、数学の公式で表すとしたらどんな数式になると思いますか?
(これは取材当日、インタビューの最初に宿題としてお伝えした質問で、藤本さんは後日テキストにて回答を寄せてくれた)

藤本:

N∞を無限クラスターの個数、pЄ[0, 1]とすると 
Pp(N∞ = k) = 1となるkはkЄ{0, 1}に限られる

つまり、
Z²上のパーコレーションでは、無限クラスターは存在しても
ただ一つである確率が1である

ーこれは、どういった意味でしょうか?

藤本:世界中の熱意ある多種多様な学生が、“42”という一つのネットワークのもとにおいて日々研鑽している。このような組織は“42”以外には存在しない。ということを表しています。

藤本悠太(Yuta Fujimoto)
小学生の時に出会った算数の中学受験問題に魅了されて以来、算数・数学好き。大学の数学科に在学中。大学では確率を専攻。大学2年のプログラミングの授業をきっかけに、Web企業でインターンを始める。インターン先で42東京の学生と出会い、42東京を知る。2021年2月にPiscineを受験、同年4月に入学。
42東京の学習を通じてAIの研究開発に興味を抱き、AI分野への大学院進学というキャリアプランを思案中。

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取材・執筆:望月智久

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